当園では有機茶への取組みを始めています。
今、食物の流れは有機栽培のものに向かっています。それは茶も例外ではありません。世界的な抹茶ブームを受け、世界中で有機茶の名の下に数多く抹茶が販売されています。しかしながら私達宇治の茶の生産者から見れば、おおよそ抹茶とは言えないものが数多く見られます。そのような抹茶に出くわす度に「本当に美味しい抹茶を世界中の人に届けたい。飲んでいただきたい。笑顔になっていただきたい」と、私たちの思いは強くなっていきました。
有機茶への取り組みを始めたもう一つの理由は、農薬の耐性を持った害虫の出現です。慣行栽培では害虫駆除の適期をいくら見計らったとしても、最低限量の農薬の使用は免れません。そして度重なる農薬散布により耐性を持つ虫も現れます。するとそれに応じて、また次の新しい農薬の使用が必要となり、その駆け引きはどこまで行っても終わることがありません。それは本当に怖いことなのです。
このような2つの思いから、今、私たちは有機茶への転換をはかっています。
私達、茶生産者にとって、有機JAS制度に定めた規定に沿って茶を作っていくことは、とても大切なことです。しかしながら私たちが今まで使ってきた有機肥料の中には、それがきわめて小ロットでの生産であるが故に、この規定では承認されないものもあります。したがって、認定を受けた有機肥料を利用しながらも、私たちが今まで生産してきた茶と変わらない良質な茶を生産していくことが、私たちにとってのこれからの課題です。
しかしそんな試行錯誤の中でも、茶の木は無事に生育してくれ、朝日にキラキラと輝く巣を張るクモはもちろん、アブラムシの捕食者であるテントウムシも茶園に見られるようになりました。
そして今、ようやく有機茶を出荷できるようになり
少しずつではありますが、笑顔の輪が広がり始めました。
また今、持続可能性への取り組みが求められていますが、私達の茶づくりはまさにそれに即しています。
本ず栽培で遮光に用いられた稲藁は、解体された後に畝間に敷き詰められ、その後、土に戻ります。
また茶摘み後に借り落とされた枝や葉も鋤き込まれて土を豊かにし、肥料には油粕や魚肥など、私達の食べ物の副産物を用います。そして、そのようにして出来上がった抹茶は丸ごと摂取されて茶殻を残すこともありません。
なにより16世期から変わらない形で製法が受け継がれていることが、そのことを証明してはいないでしょうか。
先祖から受け継いだこの地で。
先祖から受け継いだ知恵と工夫で。
過去から今日へ、今日から未来へ。
これまでも、これからも。
世界中の方々に美味しいと味わっていただける茶を、
私たちは作ってまいります。