抹茶は、碾茶(摘採期前に棚施設等を利用して茶園をよしず、コモ、寒冷紗などの被覆資材で 2~3 週間程度覆った「覆下茶園」から摘採した茶葉を蒸熱し、揉まないで碾茶炉等で 乾燥させて製造したもの:公益社団法人日本茶業中央会)を、茶臼等で微粉末状に製造したもの(同中央会)のことを言い、二次加工品です。
その昔、抹茶は商品として販売されておらず、各消費者が碾茶を求め自ら石臼で挽いて作られるものでした。石臼が電動化され、抹茶を包む包装材が作られるようになった近年になって、抹茶として販売されるようになりました。
通常、抹茶は、各生産農家から納められた多品種の碾茶を各茶業者がそれぞれの銘柄に応じてブレンドして作られます。これを宇治では合組(ごうぐみ)・合す(ごうす)といいます。これに対して最近では、単一農園(シングルエステート)・単一品種(シングルオリジン)として各農家で生産される茶が注目を浴びています。
碾茶農家である当園が生産する茶は、まさしく単一農園・単一品種の茶です。
煎茶・玉露はその形状から伸び茶(のびちゃ)とも呼ばれ、碾茶は薄葉(うすは)とも呼ばれます。覆い下で育てられた茶の新芽は少しでも光合成をしようと葉の表面積を広げ葉緑素(クロロフィル)を増やします。その結果、鮮やかな緑の色の、まさに薄葉の名にふさわしい、石臼で挽くのに適した薄さの碾茶となるのです。
碾茶は一芽一芽摘み取られるその瞬間も、覆いの下で日光を遮られています。
そして、摘み取られた新芽は蒸し機で蒸されたのちに、碾茶炉で乾燥され荒茶となります。
葉脈や葉柄を外され挽きやすい大きさに整えられたものを仕上げ茶といい、それはゆっくりと石臼で挽かれます。一つの石臼から一時間で挽き上がる抹茶の量はわずか40gほど。茶の柔らかさや仕立て方、石臼の目立てや芯木の調整、回転数などでその量は変わります。
抹茶の美味しさは複雑です。甘味・うまみだけではなく、苦味・渋み・農作物だからこその蘞み(えぐみ)、そして香りが層となって、美味しさを形成します。
素材である良質な茶と高い合組の技術によって、抹茶の深い味わいは紡ぎ出されます。